■ビットコインの特徴を逆手にとった不正が51%攻撃
51%攻撃は、悪意のある多数の人間によって、不正取引や改ざんをされてしまうことをいいます。
ビットコインはマイナーの承認によって、取引の真正性が担保されます。世界中の人々がマイニングを行っているからには、間違いが起こることもあります。例えば、1BTCしかもっていないAさんが、Bさんに1BTC送金後、Cさんにも1BTC送金してしまったとします。通常であれば、Bさんへの取引が先に承認されるので、Cさんに送金されることはありません。問題は、承認が同時に行われた場合です。その場合、Aさんが1BTCを手に入れた取引以降、2つのブロックチェーンが存在することになります。これをブロックチェーンの分岐といいます。
ブロックチェーンはいつまでも分岐しているわけではなく、正しくないと判断されたものは消去されます。その判断基準は、分岐後の長さです。最も長いブロックチェーンが信頼性され、生き残ります。不正な二重送金であっても、その後に多数の取引が承認されれば、事後的に正しい取引だということになるのです。この不正な承認は、全マイナーの計算能力の過半数を占めていれば、できてしまいます。そのため51%攻撃といいます。
■実際にビットコインで51%攻撃を受けた例はない
先ほどの例で、世の中に10人のマイナーがいたとします。そのうち6人が悪意のある改ざんをしようと、一致団結したとします。この6人とAさんCさんはグルです。A さんはBさんのお店でビットコインを使って買い物をしました。そしてその後すぐ Cさんにも送金します。通常通りに処理されれば善良な4人はBさんへの送金を承認しますが、6人組はCさんの取引を承認します。この時点ではブロックチェーンが2つに分岐していることになります。そして6人組は、善良な4人よりも計算能力が高いので、Cさん以降の取引をより素早く承認できてしまいます。分岐したブロックチェーンは長いものが生き残るという法則に従って、Bさんへの送金は消去されてしまいます。Bさんは代金を受け取り損ねることになります。
実際には、世の中には無数のマイナーがいるので、51%攻撃はほぼ不可能に近いです。それに、マイニングのコスト、不正によるビットコイン価格の低下などを考えると、採算に合わないと考えるのが普通です。
2013年にあるマイニングプールの計算能力が50%超を占めたことがあり、一つの集団による支配が懸念されたことがありますが、実際に攻撃されたという事例はありません。
■ 仮想通貨の中でも51%攻撃に最も強いビットコイン
51%攻撃を完全に防ぐ方法はありません。ただマイニングプールが世界でどれだけの計算能力割合を占めているかを把握することはできるので、ある程度抑止力になっているといえます。
アルトコインでも、51%攻撃のリスクはあります。最も市場規模が大きいビットコインは、最も51%攻撃に強い仮想通貨です。
仮想通貨は中央管理しない民主的な通貨だという意見があります。多数決の原理をこのようなところで悪用する可能性があるとは、意外だったのではないでしょうか。この欠点を克服できるようになれば、仮想通貨の信頼性はさらに高まります。