■投資対象としてだけじゃないビットコイン。決済手段として活用される
新たな決済手段として無限の可能性を秘めた仮想通貨、ビットコイン。価格の変動が激しいため、投資対象というイメージも強いです。しかし通貨という名前通り、円やドルなどと同様に店舗や個人間での取引に使われています。その普及状況と、これからの可能性について解説します。
ビットコインは、ウォレットという仮想の財布のようなものを使って、通常の通貨同様にお店での支払いや送金を行うことができます。必要なものは、ウォレットをインストールしたパソコンやスマートフォンだけ。ウォレットは二つの暗号数字でできています。自分の秘密鍵といわれるパスワードのようなもの、相手の公開鍵という口座番号のようなものの二つです。スマートフォンにウォレットアプリを入れておけば、簡易的なパスワードだけで瞬時に送金が可能です。相手の公開鍵は二次元バーコードで読み込むことができます。ビットコイン自体は、取引所や販売所と呼ばれるところから、インターネットで気軽に購入することができます。
その取引の簡易さや、世界的な規模で普及がすすんでいる影響で、ビットコインを決済手段として使っている店舗は年々増加する一方です。クレジットカードや電子マネーを凌ぐ日も遠くないでしょう。
■決済可能な店舗数は、初期の2年で4倍に!
ビットコインが使用できる店舗は、コインマップ(http://coinmap.org/)というサイトで調べることができます。店舗の情報は誰でも追加・削除できるため、完全に正確とはいえませんが、掲載するメリットは店舗と利用者双方にあっても、嘘の情報を書くメリットは誰にもないので、信頼できる情報だといえます。
このマップには、ビットコインで常時決済ができる店舗は2013年3月に世界でたった3軒しか登録されていませんでした。それが、その年の12月には1,853軒に急拡大。2014年末には5,487軒、2015年末には7,270軒と、たった2年間で4倍になっています。
使用できる店舗の形態は、飲食店をはじめとして、ホテルや雑貨屋、さらにはドルなどの通貨と交換できるATMまで存在します。変わったところでは、大学の学費を納入するのにビットコインを利用できる国もあります。
大手小売店では、ビットコインを直接の決済手段に使うのではなく、瞬時に自国通貨に交換する決済サービスを取り入れているところも多いです。メキシコのセブンイレブンでは、決済サービス会社を利用することによって、全店舗でビットコインによる決済が可能になっています。こういった決済サービスが普及を後押ししていることもあり、決済可能な店舗はますます増えていくでしょう。
■国内でも負けずに普及を続けている。数百万店舗で使える日も近い?
国内の店舗がビットコインによる決済を最初に取り入れたのは、2013年7月。ある六本木の飲食店でした。ここにはビットコインのATMも設置されています。ここを皮切りに、東京から大阪、九州などで徐々に数を増やしていきました。コインマップの登録上、2013年末には全国で10店舗に満たないものでしたが、2014年末には、約50店舗に拡大。2015年末には100店舗近くとなっています。このサイトに登録されているは一部だけで、某決済代行会社によれば、2015年末には全国1,000店舗以上でビットコイン決済を導入していたとのことです。世界に負けず、普及速度を速めています。
2016年5月に成立した改正資金決済法も、ビットコインをはじめとした仮想通貨の普及を物語っています。これによって、仮想通貨のお金としての立ち位置が明確になりました。ビットコインが出回りだした2009年からたった7年で、日本の法律を変えるほどの影響力を持ったということです。一般的に普及しているものでなければ、ここまでの力は持たないでしょう。
さらに普及を加速させるのは、先ほども出てきた決済サービスです。国内大手のレジュプレスは、クレジットカードの決済用端末を利用することで、ビットコインによる決済を可能にしました。これによって、潜在的にビットコインで決済可能な店舗は、数百万店舗に及びます。
関連するサービスも後押ししています。仮想通貨の普及を妨げているものひとつに、ハッキングによる消失のリスクが他の資産よりも高いということが挙げられますが、このリスクを限定する保険もあります。三井住友海上は、ビットコインなどの仮想通貨がハッキングによって盗まれたり、紛失したときにその損害が補償される事業者向けの保険を販売しています。大手取引所のビットフライヤーと共同開発したもので、もちろん同社も契約しています。こういった保険に加入しているかどうかも、ビットコインを利用するにあたっての業者選びのポイントになってきます。
もはや、国内ではビットコインを受け入れるインフラは整っているといって状態です。あとは、実際に利用する我々次第です。
■さらなる普及で利便性が向上。何が必要?そもそも通貨って何だろう?
ビットコインは、ブロックチェーンという強固なシステムを用いた、革命的な技術です。長らく空想上の産物とされていた、発行主体のない通貨というものを作り上げました。決済手段としてのビットコインがもっと普及すれば、店舗での決済はさらにスムーズになり、海外旅行での両替のコストや手間は不要になります。スーパーインフレやデフォルトに備えたリスクヘッジとしての役目も果たすでしょう。ビットコインを地域通貨として、商店街で普及させようという試みもあります。もっと広く受け入れられれば、通貨としての価値も上がるかもしれません。
もっと一般的なものになれば、関連するサービスがどんどん開発され、利用可能な場所も増えていくでしょう。もっと全世界的に普及していくためには何が必要でしょうか?それは、我々がビットコインを通貨と認め、関心を持って、実際に使ってみることです。
円やドルなどの伝統的な法定通貨を最終的に流通させるのは、政府や国会です。そもそも、誰もが認めるこれらの法定通貨が財やサービスの交換手段として使えるのは、「皆がそれを通貨と認めているから」に過ぎません。それはシステム上の記録としてのみ存在するビットコインも同じことです。この新しい通貨の信用性を担保するシステムは、多数決の仕組みが基本になっています。購入したビットコイン、結局どこで使えるの?という問題を解決するために重要なことは、自分のウォレットを持ち、積極的に使っていくことで、その存在感を世の中にアピールすることです。