■便利な裏にも、デメリットはある
革新的な技術でメリットを生み出すビットコインですが、必ずしもメリットばかりではありません。
また、ビットコインは仮想通貨の先駆けとなって誕生したものですが、その後、数百の仮想通貨が生まれており、その中には送金スピードなどビットコインを上回るメリットを持ったものもあります。
大きなメリットを持つビットコインですが、後発の似た仕組みを持つものと比べてみると、相対的にデメリットとなる部分もあります。
ただし、ビットコインは仮想通貨の全体の中では8割ものシェアを持ち、利用者は世界に広がっています。これは他の仮想通貨に対するデメリットを補って余りあるメリットです。
■通貨といっても、使える場所が限られる
そうはいっても、ビットコインの運営が開始されたのは2009年からであり、歴史が浅い分、使える場所は限られています。貨幣のような現物があるわけではなく、利用にはスマートフォンやパソコンなどのIT機器が必要だということもボトルネックになっています。
日本では、通信販売大手をはじめ、一部の飲食店などで使うことができます。ビットコインマップ(http://coinmap.org/)という便利なものがあり、地図上でビットコインが使用可能な店舗がわかるというものです。2016年10月時点では、全国で約80店舗で利用できます。
とはいえ、その普及のスピードはすさまじく、先ほどのビットコインマップによれば、ビットコインが使用可能な店舗は2013年末頃に全世界で1,870店舗だったのに対し、2015年末頃に7,334店舗と、実に2年間で4倍になっています。
■取引所が倒産すると、どうなる?
ビットコインの名を最も広く日本に広めたのは、皮肉にも、取引所の破綻事件でしょう。2014年、当時世界最大のビットコイン取引所で、日本にあったマウントゴックス社が突然、顧客と自社のビットコイン数百億円分が盗まれたと発表し、同社は破産申請。そしてその後、同社のCEOは、業務上横領で逮捕されました。この事件は、マウントゴックス社自体の問題であり、ビットコイン自体に問題があるわけではないというのが、一般的な見方になっています。
ビットコインを手に入れるには、誰かからもらう・取引所で交換する・マイニングする、の3つの方法がありますが、このうち一般的で最も簡単にできるものは取引所で交換することです。上場株式や外国為替が、証券取引所や銀行で売買できるのと同じで、ビットコインも取引所で売買することができます。取引所で売買し、そのまま自分のウォレットに送金せずに取引所の口座で保有した場合、取引所がもし倒産したら、ビットコインを取り戻せなくなるかもしれません。マウントゴックス社のような事例は特殊ですが、ビットコインは若い市場であり、取引所もほとんどベンチャー企業なので、倒産のリスクは低くありません。
そんな折、日本では2016年5月に改正資金決済法が成立し、仮想通貨の取引所に規制が設けられました。取引業者は会社の資金と顧客の資金を分別して管理し、定期的に監査を受けることとされています。マウントゴックスの時代に比べれば、仮想通貨の利用者を保護する仕組みは格段に向上しています。
■インターネット上の通貨ということは、ハッキングされやすい?
仮想通貨は、インターネット上に存在する通貨です。ということは、悪意のある誰かがハッキングをして、悪用されるということが起きやすいのでしょうか?マウントゴックス事件の全容は全てが解明されたわけではありませんが、他にも香港のビットフィネックス社、イギリスのビットスタンプ社などの取引所が、ハッカーの攻撃を受けてビットコインを焼失しています。
これらの事件は、ビットコインのシステムそのものがハッキングされて、不正送金や改ざんが行われているわけではありません。ビットコインの核となるブロックチェーンとしいう仕組みは、全ての取引が複数の証人によって証明されており、それを改ざんするのは不可能です。世界中の承認者のコンピューターを攻撃しなければいけません。もし仮に物理的に可能だとしても、攻撃者にとって採算が合わないでしょう。
取引所がハッキングされてビットコインを盗まれる、というのは、取引所のセキュリティーの甘い部分を突かれ、ビットコインの取引に必要な「鍵」などの情報を盗まれて、どこかに送金されてしまうということです。ビットコインのシステム自体が書き換えられたり壊されているわけではありません。とはいえ、現金はハッキングされるリスクが全くの0ですから、それに比べればほんのわずかながらリスクがあるといえます。また、ビットコインのやりとりは、ウォレットと呼ばれる仮想の財布で行いますので、ウォレットのアプリを入れたパソコンをハッキングで乗っ取られてしまうと、取引所同様に不正に送金される恐れがあります。
■パスワードなどのセキュリティはどうなっている?
「鍵」という言葉がでてきました。これは例えでなく、実際に鍵と呼ばれています。ビットコインのセキュリティは、公開鍵と秘密鍵という仕組みによって守られています。AさんがBさんに送金する場合、BさんはAさんに自分の公開鍵を送ります。Aさんは、秘密鍵が知られてしまうと、どこにでも送金が可能になってしまいます。
ビットコインのやり取りをするウォレットには様々な種類がありますが、秘密鍵をなくしてしまうと、二度とそのウォレットを使用することはできません。秘密鍵は通常、ウォレットの中に内蔵されており、これを起動するのにパスワードを設定します。なので、パスワードを忘れてしまうと、そのウォレットに入っていたビットコインは二度と使えないのです。これが、インターネットバンキングなどで扱われるパスワードとの大きな違いです。
秘密鍵を推測することはほぼ不可能ですが、パスワードを書いたメモなどを紛失して拾われてしまえば、悪用される恐れもあります。また、パスワードや秘密鍵そのものをデータ化してパソコンに保存していたら、パソコンがウイルスに感染して中身を見られてしまうかもしれません。
セキュリティはビットコインだけでなく、仮想通貨全体の大きな課題となっています。